ビザ取得について

 

今回、文化庁から助成を受け、アメリカで一年間の研修を行うにあたり、最初にして最大の問題がビザの取得についてでした。

私の現地での受入先は、アメリカ在住の彫刻家 大平實さんのスタジオです。

そのスタジオで、大平さんの彫刻の生まれる環境や状況に身を置きながら、自身も制作をすることで、日本では得難い経験ができると考えました。大学や美術館などが受入先の場合は、学生ビザや研究者ビザなどにアプローチすることになると思いますが、

受入先が個人の作家である場合、私と同じようにビザ取得に苦労する方が出てくるかと思い、このページを作成しました。

 

ビザの取得に際して、私は、まずはロサンゼルスに事務所を構える弁護士事務所に初回無料相談することから始めました。

その弁護士事務所の弁護士はカナダ系アメリカ人の方でしたが、日本人スタッフも在籍しており、日本語での打ち合わせが可能でした。メールで問い合わせをして、スカイプでの時間を決め、担当弁護士と日本人スタッフの2名で初回相談をしてくれました。

私の研修の内容を伝えると、O-1ビザ(同行する妻はO-3ビザ)の取得を目指すことが最適との回答を受け、すぐに申請の準備に取りかかることにしました。その後の経過については、以下に時系列に沿って記載します。

 

2013  2月下旬 文化庁より日本美術家連盟を通じて、研修員内定の連絡を受ける。

              3月上旬 弁護士事務所と初回無料相談(スカイプ)

              3月下旬 O-1およびO-3ビザの申請を弁護士事務所に正式に依頼する。

 

~この期間に弁護士から準備するように言われた資料~

ポートフォリオ、展覧会の図録やパンフレット、受賞の際の賞状、掲載された雑誌や新聞、過去の売却作品の価格表、戸籍謄本、パスポート等…今までの活動の実績を証明するものなどを郵送またはスキャンしたデータで提出しました。

 

~また、ビザ申請で必要になる推薦状作成のための推薦者5名を選出して依頼するよう指示されました~

(推薦状の数については、弁護士事務所によってかなりバラつきがあるようですが、私は5枚で十分と説明されました)

私は、アーティストエージェント会社、アメリカ在住の彫刻家、美術大学教授、美術館学芸員、アートギャラリーのディレクター、の5名の方々にお願いしました。いずれも日本人の方でしたが、担当弁護士は問題ないとのことでした。

推薦状は、私が推薦者の情報や私との関わりを担当弁護士に伝えて、弁護士が英文で作成した推薦状の内容に問題なければ、推薦者にサインをして頂くという流れでした。必要であれば推薦状の日本語訳(有料)も準備してくれます。

 

              5月上旬 文化庁より予算成立のため、研修員確定の連絡を受ける。

              6月上旬 全ての資料、推薦状が準備出来たので、弁護士事務所を通じて米移民局へビザ申請を行う。

             

              8月上旬 米移民局から追加書類要請。資料をすぐ準備して弁護士を通して提出する。

        (追加資料の内容は、現地での一年間の研修計画の詳細日程を提出せよとの内容でした)

 

              8月下旬 米移民局から申請却下通知、すぐに再申請の資料の準備を始める

              (当初は9月中旬に渡米する計画でしたが、一度目の申請却下によって日程の変更を余儀なくされました)

 

※申請却下の内容としては、申請の際に必要になるスポンサー会社について、大平氏より紹介を受けて私自身も交友のあった、ロサンゼルスのアート系の会社にお願いしていましたが、その会社の仕事内容と私の専門分野(彫刻)との関連について問題が

あると判断されたようでした。その為、弁護士事務所から紹介された、ロサンゼルスのタレントエージェント会社をスポンサーとして

再度、ビザ申請を行うこととしました。更に専門分野での実績を証明できそうな資料や追加の作品資料も準備しました。

 

              9月中旬 追加資料を準備完了、弁護士事務所を通じて米移民局へビザ再申請を行う。

 

     10月上旬 米移民局より追加資料要請。資料をすぐ準備して弁護士を通して提出する。

        (追加資料の内容は、私の専門分野での「卓越した能力」についての資料が不十分との内容でした)

         まだ提出していない作品資料などを提出しましたが、弁護士は形式的な資料要請の可能性が高いと

         判断していました。(移民局は時々そんな感じで形式的に追加資料を要請することがあるようです)

 

O-1ビザは、カテゴリーの中では、『科学、芸術、教育、ビジネス、またはスポーツの分野で「卓越した能力を有する者」に発給されるビザです』とされており、専門分野での卓越した能力を証明する必要があると言われますが、必ずしも顕著な実績が必要なわけではなく、今回の追加資料要請も、弁護士の感触では十分な資料は提出しているので、形式的なものだろうとのことでした。

 

     11月上旬 米移民局よりビザ申請通過通知、弁護士を通じて日本のアメリカ大使館での面接の予約をいれる。

     11月下旬 大使館にて面接、ビザ発給の認定を得る。

     11月下旬 手元に大使館から送られてきたビザスタンプのついたパスポートが届く。

 

201312  6日 渡米

 

以上が、私が渡米前に経験したビザ取得までの簡単な流れです。

弁護士費用と申請費用を合計すると、私と妻の2名分で約80万円ほどかかったかと思います。

また、文化庁から発行される新進芸術家海外研修制度の研修員の証明書は、アメリカのビザ申請においては、ほとんど効力を発揮せず、文化庁から助成を受けることの証明書として使用するくらいです。

私は2月末の内定通知を受けてから、すぐに弁護士に相談して早めに準備してきたつもりでしたが、それでも渡米が12月になってしまいました。研修制度の規定では翌年の3月末までに研修を開始する必要がありますので、本当に早め早めに準備を進める必要があると思いました。

それと私が感じたのは、アメリカの弁護士事務所は(渡米してみて弁護士事務所だけでないと気付きましたが)こちらがしつこく連絡しないと一向に進展がない場合があります。日本人的感覚できっと進めてくれているだろうと思って待っていると、どんどん時間だけが過ぎていることもあるので、本当にしつこいくらい現在の状況について随時、確認することをお勧めします。

 

渡米後の流れについても以下に簡単に記載しますが、それこそ一人一人状況が異なると思うので参考程度になればと思っています。

 

201312  6日 渡米の際の荷物は、私と妻のスーツケースと手荷物各1個ずつ、それとリュックサックのみでした。

         まずは10泊分のホテルを予約しておいて、あとは渡米後に何とかなると思いきって旅立ちました。

 

アメリカ到着後、ホテルに泊まりながら「びびなびロサンゼルス」という現地の情報サイトから、日系の不動産会社に問い合わせをして、数件のアパートを内見してアパートを決めて、契約しました。

 

     1216日 ホテルからアパートへ引っ越し。家賃はひと月$1,100-

 

~この期間には、ソーシャルセキュリティナンバー(SSN)申請・取得、ユニオンバンクに銀行口座開設をしました~

(ユニオンバンクは日本語の通じるスタッフが在籍している店舗もあり、簡単に口座を開設できました)

 

2014  1月上旬 カリフォルニア州の自動車免許試験に合格、免許取得。

 

※日本から持参した国際免許証でも運転は可能だが、カリフォルニア州ではアパートなどを借りて移住する場合、早急にその州の免許を取る必要があるとのことでした。学科試験は(場所によりますが)日本語でも受ける事ができます。

実技試験は近年、厳しくなっているとの情報もあったので、現地で自動車教習を4回ほど受けてから試験に臨みました。

 

2014  1月中旬 中古車購入(トヨタカローラ)3,000-

 

当初は車を購入するか、かなり迷いましたがロサンゼルス等の地域では車がないと移動が本当に大変で、研修先のスタジオにも行けないので購入に踏み切りましたが、レンタカーを借り続けるよりも安価で正解でした。トヨタカローラは2000年製造でマイル数も13万マイルを越えていましたが故障もなく、コンパクトで良い車でした。帰国の際には、知り合いの方に購入して頂きました。

 

2014年 11月20日 帰国しました。

また、何か参考になりそうな情報があれば掲載しますが、以上が私が経験したビザ申請および現地滞在時の情報になります。

情報は私がビザ申請した2013年から帰国した2014年のものになりますので、最新の情報などはご自身でよくご確認頂く必要があると思います。少しでも、何かの役に立てれば幸いです。

今回の研修において、ビザ申請や滞在の際にご協力頂きました全ての方々に心から御礼申し上げます。

2015年1月 松岡 圭介