N.E.blood 21 松岡圭介展

 

  「N.E.blood 21」は精力的に制作、発表を行っている東北・北海道在住若手作家を紹介するシリーズ企画である。毎年複数の作家を取り上げ、美術館とアーティストとの新しい関係を模索しつつ、作家同士のネットワーク形成を念頭に置き展覧会を開催している。第56回目となる本展では宮城県仙台市在住の作家 松岡圭介を紹介する。

  松岡が生み出す作品はヒトのような形をしている。しかしそれは生物学的、あるいは客観的に定義されるヒトの形とは違う。

  人間を知らない何者かに対して、人間を表現してみせようとするならば、単体の生物としてのヒトの形をつくるだけでは不十分である。なぜなら、「人間」とはヒト対ヒトのあらゆる関係性において多種多様な側面を現す「ヒトの集合体」だからである。

  ヒトは、ときに悪魔のようであり、神のようであり、野獣のようであり、空っぽの器のようでもある。また、金属のようであり、綿のようであり、実体を持たない思念のようでもある。そしてそれら全ての様態は集合体となって人間を形成する。

  どこから見ても同じに見える球体を立体的に捉えるためには面を想定する必要がある。人間の捉え方も同じではないだろうか。人間は多種多様な価値観や思想、文化を重層的、多面的に有している。その面の違いを意識できて初めて、我われ人間は争いを捨て、人間という集合体を立体的に捉えられるようになる。

  松岡は「同じに見えて同じでない人間」の多様性、多面性を立体的に捉え、結合させ、削り出すことで、無数の面を持つ塊としての人間像、普遍的に共有可能な「人間の形」を生み出そうとしている。その行為は人間を彫刻することに他ならない。

 

リアス・アーク美術館 学芸員 山内宏泰